酒税法律上からの禁じ手・掟破りな梅酒の作り方を紹介します。ここで紹介する梅酒は製造免許を持つ製造者しか作れません。紹介する理由は蔵元からの話ですと、作ればかなり旨いとお聞きしているので、話しだけどもと思って書いてみました。マニア編と超マニアック編と内容が重複します。
あえて禁じ手とか掟破りとうたってあるのは、電話やメールで梅酒の作り方の問い合わせが多すぎるからです。酒税法についてもくどくどと説明しなければならず、仕事に差しつかえがあります。質問が来ないため、また、酒税法を知っていただくために書いてみました。
あくまでも日本の酒税法を厳守して作り、お楽しみ下さい。
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■ 禁じ手 その①
梅1Kg + みりん1.8L + 糖分0
2008年のNHK教育テレビの梅酒の作り方において、みりんを使って梅酒を作る方法を紹介していました。
ところが、この方法は酒税法上の違法であり、NHKにたくさんのクレームが届き、この番組のこの時のアーカイブは削除されました。
つまり、みりんで梅酒を作るのは禁じ手であるわけです。
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禁じ手の理由
酒税法ではアルコール20゜以上の酒類に限るとなっています。みりんはアルコールが14゜くらいですから、梅酒には使えないことになります。アルコール14゜に梅が加わると、アルコール度が下がり、野生酵母による醗酵や雑菌による汚染の恐れがあります。醗酵してしまうと自家醸造になってしまいますし、雑菌に汚染されますと、美味しいとは言えない味わいになってしまいます。日本では自家醸造は禁止されているのでこの法律が生きているわけです。アルコール度が低いと腐るからと解釈している方もいますが、実質上は税金上の問題であります。お酒を作りたかったら、決められた数量以上を作り、酒税を納めろというわけです。自分で作ったものが腐るからでは、法的根拠はありません。基本的に口に入る物はみんな腐ります。
みりんメーカーはみりんを使った梅酒を製造販売しています。エキス分が多い、美味しい梅酒です。みりんは麹の糖分があるので、氷砂糖などの糖分は要りません。みりんと梅を合わせれば出来上がりです。
では、どうしてみりんメーカーはみりんで梅酒を作れるのか?
みりんメーカーはみりんで作った梅酒のアルコール分が低いことを補うように、火入れ殺菌の他、それなりの処理を施しています。
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梅酒用みりんはあるのか?
みりんと名がつく酒類のアルコール度数は14゜未満であるために、梅酒用みりんは存在しません。(みりん梅酒を作るメーカーにはありますが)
NHKでも堂々と放送されたようにみりんで梅酒を作れば美味しい。しかし、アルコール度が問題だ!
そこで私は日本果実酒倶楽部を結成し、みりんのアルコール度数を強めたみりん(酒税法ではリキュール)を作りました。梅酒用秘蔵酒として2010年5月より販売しています。
梅酒用秘蔵酒は本格焼酎を使った酒精強化みりんであり、現在唯一の逸品です。
梅酒用秘蔵酒の元となったみりんは一般的な本みりんではありません。一般的な本みりんで梅酒を作りますと、薄くてバランスがよくない梅酒となることでしょう。
梅1Kg + みりん1.8L + 糖分0 = NG
梅1Kg + 梅酒用秘蔵酒(酒精強化みりん)1.8L + 糖分0 = ◎
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■ 禁じ手 その②
梅1Kg + 白ワイン1.8L + 糖分750g
白ワインもアルコールは20゜いきません。となると上と同じ理由で梅酒には使えないことになります。この方法は実は朝日新聞で紹介されていました。違法ですので、訂正が後日出された問題の方法です。糖分の量はこのくらいだったかはおぼえていませんが、多分このくらいでしょう。
私が想像するには、ワインのリンゴ酸と梅のクエン酸が加わり、それほど酸味もない軽やかでさわやかな梅酒ができそうです。ワインメーカーさん、作って販売してほしいです。
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■ 禁じ手 その③
梅1Kg + 日本酒(アルコール20゜未満)1.8L + 糖分500g
アルコール20°未満の日本酒も同様に梅酒には使えないことになりますね。丸河屋で販売している梅酒用日本酒は20°ありますから堂々と梅酒を作ることができます。もの作りの観点からすれば、どんな日本酒でも美味しい梅酒になる可能性はあります。ただし、アルコール度数の低いお酒で梅酒を作りますと、アルコールの低い梅酒ができます。雑菌に汚染される可能性が高く、火入れ殺菌などをする必要があります。日本酒仕込みの梅酒を製造している蔵元が使う日本酒は普通のアルコール度数のものもありますが、火入れ殺菌はしているようです。