看板

 杉井酒造  静岡県 藤枝市
 JR藤枝駅北口よりタクシーで約5分、蔵には煙突がありますが、木のふたで作った看板が、来客を出迎えます。
 蔵の周辺には田んぼがいっぱいです。

由緒

 蔵の横の公衆電話には「由緒」が書いてある看板があり、その中には「昔この地に大松があり、その根元から湧き出る水は清く瑠璃のようであった。」と書いてあります。

 昔、この辺りには松がたんさんあったようですが、現在は蔵の敷地内に1本を残すだけとなっています。

蔵にある由緒ある松。
良水の源。

松

麹

 平成12年冬から社長の杉井均之介氏が杜氏となり、蔵人と共に酒造りをしています。以前から蔵で酒造りを手伝ってきましたので、良い酒を造るためにはどうしたらよいか、肌で感じてきたと思います。

 写真は仕込み直前の、出麹の手入れをしています。部屋には蒸したばかりの栗のにおいがしています。


杉錦 蔵元だより H15.春号

 桜の季節もすぎ、すがすがしい若葉の季節がやってきました。緊張と多忙の日々がようやく一段落し、今度は出来上った酒を御客様に評価していただくという意味で緊張する時期でもあります。

「静岡県鑑評会の話」
 静岡県の鑑評会のやり方は2つの意味で特徴的です。
1.審査方法
 一般的には、利き酒猪口に注いである酒をずらりと並べておいて、審査員が各自、自由に動きながら、利き酒をしていくのですが、審査員5名は着席して、その前のテーブルに14゜Cに冷やされたお酒が5点づつ運ばれてきます。お酒の品温を全て同じにして公正厳密な審査をしようという配慮です。
2.審査方針
 全国鑑評会をはじめ各地の鑑評会では、カプロン酸エチルという成分の多いお酒が入賞しているのですが、静岡県ではこの成分が多いお酒は入賞できず、入賞対象となるのは酢酸イソアミルという香りの成分です。そのため同じ上位の入賞酒でも静岡県のお酒と、他の鑑評会のお酒では印象が非常に異なります。この方針は静岡県の酒造りを指導していきた沼津工業技術センターの河村先生によって4年前に打ち出されました。吟醸酒の香りの成分はの主体は15年くらい前までは、全国どこでも酢酸イソアミルでした。この成分はバナナのような香りで、軽くすっきりしています。ところが吟醸酒の香りの華やかさを競う中で、カプロン酸エチルという成分が、その後開発されました。この香りは洋梨の香りと例えられますが、華やかで重圧な感じがします。この酵母で造ったお酒が鑑評会に出てくるようになると、従来の酢酸イソアミル主体のお酒は、香りが少ないという印象になり、全国どこの鑑評会でも入賞酒は、カプロン酸エチルの香りが強いお酒が99%という状況になってしまいました。しかしこの酵母のお酒は、華やかな香りの裏返しとして、飲み飽きする、料理との相性が狭いなどの欠点があります。また、熟成すると濾紙やビニール、あるいは河村先生の言葉を借りれば、ドブ臭という嫌な臭いがしてきます。静岡県の鑑評会審査基準は、見かけの香りの華やかさではなく、本当に美味しく飲めるお酒を選ぶという考え方に基づいています。

 杉錦は静岡県の鑑評会では、吟醸の部では落選、純米の部では入賞でした。鑑評会に先立って行われた、杜氏持寄会では吟醸がトップに並ぶ成績だったので、気をよくしていたのですが、本番はよもやの落選でした。一般公開で利き酒してみると、先に書いたカプロン酸エチルが少し強すぎたようです。今年はNEW-5という酵母の主体で造ったのですが、来年はより酢酸イソアミルの出るHD-1という酵母で挑戦したいと思います。名古屋の鑑評会では吟醸の部に入賞できました。全国鑑評会は現在審査中です。

 自分達でお酒を造るようになって鑑評会が楽しみになりました。いつも入賞できるわけではありませんが、一般公開や懇親会に出かけて行って、酒談義をしたり、いろんな話を聞かせてもらって、また次の酒造りの構想を考えるのも楽しみです。また鑑評会も大事ですが、それ以上に鑑評会に出さない残りの99.9%のお酒の出来合いこそ大事だと痛感しています。そういった意味では、前以上に丁寧な仕事ができるようになったと思います。

杉井酒造 代表 杉井均乃介


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