醸造アルコールの是非

 お客様からも講座の受講者さんからもよく質問をいただきます。

 「醸造アルコールって何?」
 「醸造アルコールが入っている方がよくないでしょ?」

 酒業界内でも醸造アルコールならぬ増量アルコールだと言われる方もいます。良くも悪くも取られてしまう醸造アルコールについてですから、表立って公表しづらい点もあります。

 日本酒には醸造アルコールが添加されている本醸造系と入っていない純米系に分かれます。

 アルコール添加については江戸時代から柱焼酎の添加として始まっています。江戸時代には冷蔵設備がなく、アルコール度の小さなお酒は雑菌などにやられてしまいます。お酒がお酒とは思えない液体に変化してしまいます。このために江戸時代に伝わり、造れるようになった焼酎(本格焼酎)を出来た日本酒に混ぜて保存していました。江戸時代のアルコール添加は腐敗防止剤の役目をする食品添加物でありました。

 明治、大正、昭和となるにつれて、世の中のあらゆることが変わってきます
 戦争がありました。
 日本も日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と参戦します。
 日清・日露は酒税で戦ったと言われるほどに、酒税が高くなりました。
 お酒は当時の日本になくてはならない担税物資となったわけです。
 国税の1/3であります。

 第二次世界大戦で日本は負けますが、負ける前後の状況はひどいもので、食べる米すらない状態ですから、お酒にするお米などは明らかに少ない。国としては、少ないお米からなるべく多くのお酒を造りたい。

 そんな折、満州で三倍醸造法が誕生しました。
 これは出来上がったお酒にアルコールを入れて、アルコールが高くなった分を下げるための水を入れます。水が入った分だけ味が薄くなるので、調味料で補う製法です。出来たお酒を三倍に増やす三倍醸造であります。

 戦争で物資がなかった時代の緊急避難用の酒としてであればしょうがない。いや、優れものでありました。

 ところが、戦後日本は高度成長して、豊かになります。時代は豊かになりましたが、お酒は三倍醸造が溢れていました。低価格酒であります。

 パック酒に米、米麹、醸造アルコール、糖類、酸味料と書かれているのがあります。満州で開発された造り方と、そんなには変わっていません。

 醸造アルコールの使用量は決められています。白米1トンあたりの原料に対して、アルコール約120リットルです。この時のアルコールはアルコール100%の度数として計算されます。これは出来上がったお酒のアルコール分のおよそ1/4であります。

 問題視されている事柄がありますから、議論に上ります。

 1.醸造アルコールとは何なのか?
 2.醸造アルコールは何のために入れているのか?

 ここが壺でしょう。上の答えです。

 1.醸造アルコールは、酒造会社によっては、自社製造の焼酎を使っています。一般的には純度の高い焼酎甲類です。梅酒に使うものと同等です。醸造アルコールの原料は政令で決められていますが、昭和の50年代くらい前までは、その正体を配給元のアルコール生産会社が明かしてくれませんでしたから、石油からではないか、ブラジルやフィピリンのサトウキビのくずからではないかと騒がれました。ブラジルはバイオエタノールの先進国です。現在使われている醸造アルコールについては心配ないと思われます。

 2.醸造アルコールを入れると出来上がるお酒は多くできます。かさ上げできるわけです。増量アルコールと皮肉くる人もいるわけです。蔵元は醸造的にアルコールを入れて腐敗防止をする方が安全だと言う方もいます。では、純米酒は安全ではないのか、につながりますね。江戸時代の柱焼酎添加と同じだと言われる蔵元もいますが、添加の量が違いすぎます。柱焼酎の添加量よりも、圧倒的に醸造アルコールの添加量が多いです。そして、もろみを搾る前に醸造アルコールを添加すると、香りが良くなる。本来、酒粕に行ってしまう芳香をアルコールによって、抽出できる。吟醸香が強くなるからとの理由もあります。

  醸造アルコールを入れて加水した分、味がすっきりして、辛口になるとの理由も言われます。
  同時にその酒質を醸造アルコール抜きでするのが努力ではないかと言う方もいます。

 

 ここで添加の意味合いから、醸造アルコール以外を見てみましょうか。

 日本酒のラベル表示は酒税法で決められた基準に沿って明記しなければなりません。

 純米酒は米と米麹と書かれていますが、本当にそれだけでできるのでしょうか?

 酵母菌や麹菌を使っていることは問題ないでしょう。

 では、使用を許されていて、明記の義務がない食品添加物についてはどうですか?

 山廃造りやきもとつくり以外のお酒では、乳酸を添加しています。

 乳酸はお酒では食品添加物扱いですが、一般的には薬品です。
 この他、酵素補助剤も使います。
 濾過のために活性炭や濾過助剤に珪藻土を使い、ろ紙にも通します。

 こう考えると、醸造アルコールも一つの食品添加物のような存在に思えるでしょう。醸造アルコールは気にして、その他の乳酸などのことはかまわないとはいかないですね。

 

 私は次のように解釈します。

 醸造アルコールを添加した本醸造系=薄口
 添加していない純米系=濃い口
 の2タイプを造り出している。

 これが他の食品類と比較した時に、一番理解しやすい解釈ではないでしょうか?

 本醸造系=本醸造、特別本醸造、吟醸、大吟醸 は辛口傾向。
 純米系=純米酒、特別純米酒、純米吟醸、純米大吟醸は旨口傾向。

 醸造アルコールが添加してあるお酒は体にはよくない?とも聞かれます。

 私の知り合いの杜氏は、体のためを想って、純米酒は飲みません。
 醸造アルコールを添加してある本醸造系統しか飲みません。
 この杜氏さんの体にとっては、純米酒は濃すぎて、胃をやられることもあるそうです。

 

 現状、醸造アルコール添加酒もあるし、醸造アルコールが添加してないお酒もあるし、
 味わいがバラエティーに富んでいると楽天的に考えているのがいいのではないでしょうか?

 それから、どうしても醸造アルコール添加が許せないとか、醸造アルコールが添加してあるお酒は飲めないということならば、乳酸添加酒も飲めないですし、黒い炭が漬かった濾過してあるお酒も飲めないでしょう。

 その場合は、山廃造りやきもと造りの純米系の無濾過表示のお酒をお飲みになればよろしいかと思います。

 山廃無濾過純米酒、きもと純米無濾過酒など脚光が当たってほしい分野です。
 これまでは、香りが良いとか、切れが良いとか重要視されてましたものね。

 

 さて、いかがいたしましょうか?

 醸造アルコールの添加やお酒自体についてのお考えが変わったかもしれません。

 それから、私自身、上の文章でも書き忘れていることもある可能性があることは御容赦くださいね。


豆知識 / 丸河屋酒店