みりん

 本みりんが本物のみりんと思い込んでいる方が多いので、みりんのためのみりんを紹介するページを作りました。みりんって調味料のひとつくらいにしか思われていない、存在感の寂しいお酒です。まるで週末だけ帰って来る、忘れられそうな日本のお父さんのような存在です。丸河屋では日本酒には「清酒」「焼酎」「梅酒」「みりん」と4つあることを謳っていますから、丸河屋の存在意義からもお話させていただきます。

 商品としてのみりんは次を扱っていますので、そのみりんについてお知りになりたい時は、画像をクイックして商品説明ページにお進み下さい。みりんについて知りたい方は、次のみりんの下にづらづらと書かせてもらっていますからお読み下さい。

みりんって何?

 みりんは身近にあるのですが、よく考えたことがない。みなさんそうだと思いますよ。「料理には使うけど、飲めないものだと思って味見したことはありませんでした。」という声をよく聞きますから。今では調理用となってしまったみりんですが、庶民の飲み物だった時代もありました。昔は甘いものが手に入りにくかったですから、焼酎の甘口タイプとして飲まれていたそうです。

 現在、調味料としても使われているみりんは大きく分けて3種類あります。一つはアルコール分が1%未満の「みりん風調味料」これは酒の免許が自由に取れなかった時代にスーパーなどにありました。みりん風ですから、実はみりんではないわけです。そして「醗酵調味料」としてのみりんがあります。こちらはアルコール分はありますが、決して飲めるようなものではないようです。まさに調味料ですね。そして最後に「本みりん」があります。これが本当のみりんなので、本みりんなのですが、さらにこの中で2つに分かれます。「普通の本みりん」と「純米本みりん」です。「普通の本みりん」は、米と麹と醸造アルコールに糖類などが添加されています。「純米本みりん」は米と麹と醸造アルコールだけです。「普通の本みりん」は熟成は1年くらいで、「純米本みりん」はもっと長いものが多いですが、1年くらいのものもあります。

 更に飲用としてのみりんも含めると次のように5種類になります。(「3」と「5」が飲用専用)
「1.もち米と米麹と本格焼酎で造られる純米本みりん」
「2.純米本みりんに糖類やアルコールを加えてある本みりん」
「3.みりんを焼酎で割った柳蔭(やなぎかげ)」
「4.本みりんにブドウ糖、砂糖、アルコール、発酵調味料、化学調味料などを含んだみりん風調味料」
「5.焼酎にもち米と麹を入れてこした本直し」(節税安価焼酎飲料)

 みりんはなんて悲しい酒類なのでしょう。類似品が大きな顔をして、本物が忘れ去られています。日本では、うるち米で造った麹と、かけ米にもち米を使い、焼酎とともに仕込んで搾り、熟成させて本格的な純米本みりんを造っている正真正銘なみりんメーカーが数社あります。

みりんは料理にとっての化粧水

 女性の方なら化粧水はおわかりですね。私もランニングなどして日焼けしますので、時々化粧水を顔に補っています。化粧水は手に取ってよさがわかりますね。優しい肌触りですよね。べとべとはしていないけど、どこか粘着性があってさらさらしているきれいな水。私の買った化粧水の内容分は主にグリセリンが入っています。これはワインの中に含まれる甘味と同じ成分です。甘味が肌に浸透して、艶・色・肌触りがよくなります。

 もうお気付きでしょう。料理にとってのみりんはまさに顔にとっての化粧水と同じ役目。みりんはお料理の素材に艶を与え、色も良くし、味も美味しくさせます。このことがわかりましたら、化粧水同様にみりんも選ぶことがよろしいでしょう。

 化粧水の話はここまでにして、みりんがどうしてそのような役目を果たすのか、そのプロセスを私なりに説明します。あくまで酒屋のいうことですからねえ。でも私はカルチャーセンターの講師でもありますから、さじ加減というか、塩梅で聞いて下さい。

麹と米がキーパーソン

 みりんを使わずに、砂糖を使って料理したとしましょう。砂糖とみりんはいっしよに使ったり、使い分けたりしますから、現実的な話よりは抽象的でしょうけど。砂糖もみりんも甘いです。でもどこか違いますね。みりんの方が奥深い味になります。砂糖はさとうきびやてん菜から糖汁をとって出来てきますから、成分は蔗糖だけとなります。黒砂糖ですと鉄分やカルシウムが入ってきます。

 一方のみりんは麹の酵素が米のデンプン質を分解して、いく種類もの物質を作ります。主な糖はブドウ糖ですが、デンプンがブドウ糖まで分解されるまでにはいくつもの糖分として存在します。オリゴ糖もそのひとつです。

 麹の酵素はこれら以外にも米から様々な物質を造り出します。米のタンパク質を分解しペプチド、アミノ酸を作る。米に含まれるフィチンを分解してイノシトールとリン酸を作る。米の中のグルタミン酸からGABAを作る。

 これらの物質が料理の素材の上や奥に何層も加わり、あの艶や色が出てくると思われます。

 もし、黒砂糖を使った場合はどうでしょう。黒砂糖の中の鉄分が料理の素材の渋味であるタンニンと出会いますと、タンニン鉄になり黒ずみます。白砂糖の方がまだよさそうです。

 みりんは液体ですので、熟成してきます。色が濃くなっていきます。この時ソトロンという甘く感じられる物質が生成されていきます。醤油とかハチミツなどのも含まれる香りの強い成分です。このソトロンも美味しさに一役かっていると思います。

 これらの物質がみりんのアルコールとともに料理の材料に浸透して美味しくなるのでしょう。みりんを化学のようにしていくと、どうしても麹に行き当たります。

みりんで生臭みが消える訳

 魚などの生臭みもみりんで消えます。理由はわからなくても、自然におぼえている事実ですね。理由は3つだと自分では思っています。一つめはみりんに含まれているアルコールです。素材の生臭みはアルコールに溶けます。そのアルコールといっしょに煮て気化されるということがあります。

 二つ目ははマスキングです。レモンと同じ作用です。素材にからみあって、生臭みを封じ込めます。レモンとみりんとの違いは自己主張があるかどうかです。レモンはその存在を大きく明らかにしながらマスキングします。みりんはおとなしく、マスキングして押さえ込むというよりは、調和しておとなしくするという性質があります。

 三つ目は調味効果です。みりんの旨味の成分が食材と反応しているようです。お互いくっついて、別な旨味になっている気がしてなりません。生臭みを消すというよりは、生臭みが新たな旨味に変身したかのようです。

砂糖が先かみりんが先か

 意外に知られていない事実です。砂糖を使っていたのをみりんに変えて、料理が美味しくなっていったと考えていいのでしょうか。みりんが調味料として本領を発揮したのは江戸時代からです。うなぎのタレに使い、そばの汁に使ってみたら、すごくよかった事が流行の発端です。砂糖はどうかというと、高嶺の花でしたよ。精製しなければならないのですから、その技術や道具がなければ砂糖はできません。大豆があればできるきな粉の方が、当時は手に入りやすい糖分だったのではないでしょうか。

 日本には米も麹もあったので、みりんも造ることが出来ました。砂糖もすこぶる重宝ですが、みりんはそれにもまして宝物ですね。

 砂糖とみりんの大きな違い。
みりんは料理の隠し味になりますが、砂糖はなりません。
・美味しいとは食べた後に感じることですが、みりんは余韻があって砂糖はありません。

 砂糖が工業生産品の焼酎甲類みたくて純米本みりんが本格焼酎の存在みたいです。

みりんと清酒との違い

 みりんは調味料で清酒は飲み物。いやいやそれではここまで読んできたかいはありませんよ。みりんももともと飲用って上で書いてありますでしょっ。同じ米と米麹が原料のみりんと清酒はどこが違うのでしょう。大きな決定的な違いは、清酒が酵母を使った醗酵があるのに、みりんにはそれがありません。焼酎のアルコール下で米が溶け、麹の酵素が溶けて来る米を糖分へと分解していきます。現代の清酒はアルコールと美味しさを求めて造りますので、米を溶かさないように造っていますが、みりんは米を溶かすようにして造っています。製造の面からも違いがあります。

みりんの救世主は?

 すばらしい日本独自のみりん。この当たり前の素晴らしさをもっともっと広く共有するにはどうしたらいいのでしょう。素晴らしいと一言いって影響力のある人。私は欧米のシェフだと思っています。彼らは日本食文化も認め、日本の食材も良いものは取り入れてくるようになりました。調味料としてのみりんも時間の問題でしょう。フランス料理は隠し味の概念があり、語られることは少ないでしょうが、アメリカは堂々と脇役も見せる力があります。寿司がアメリカから流行していったように、みりんもまずはアメリカからでしょうか。いずれにしても、調味料もしっかり味見して使ってくれるので、期待感があります。

 

 以上、ずらずらとみりんについて書いてきましたが、また気が付いたことがあれば追記していきます。

杉錦純米みりん
杉錦純米みりん


三河みりんの柳かげ

静岡県下唯一のみりん

江戸庶民の風流酒

丸河屋