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 ”酒縁に感謝  ” 静岡 丸河屋 「ただいま」NO.92 2003/7/30
 
 
      酒の数ほど浪漫があって、盃の数ほど夢がある。
 
       こんにちはっ! 丸河屋の河原崎吉博です。
 
  「悲しみに〜 出会う度〜 あの酒を思いだす〜
       人は皆、飲まずには〜 生きていけないものだから〜。」
 
 
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■蔵元訪問特別号
 
 松下酒造訪問記   後半 「萬屋次兵衛の源点」
 
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 清酒と焼酎の日本酒専門店 静岡丸河屋の担当者 河原崎吉博です。
 
 酒業界では「まるちゃん」、家では「よっちゃん」と呼ばれる40才です。
 
 今日も前号同様に内容をいつもとは、がらりと変えて、お送りします。
萬屋次兵衛の製造元の松下酒造さんに1泊2日で行ってきました。その訪問
記の後編です。前号は「陸の孤島の最果てで見つけたものとは」というタ
イトルでお送りしました。まだ読んでいないようという方は、バックナン
バーから御覧下さい。
こちらです。
http://www.marukawaya.com/mailmagazine.html
 
 それから、松下酒造の応援サイトでは、蔵のある水上村なども映って
いますので、それらを見ながら、このメルマガをお読みいただくと雰囲
気がよりいっそう伝わりますので、是非そうしてみてくださいね。
http://homepage3.nifty.com/yorozuyazihee/
 
 
 あっといけない! 萬屋次兵衛って何? という方。
 
 萬屋次兵衛は当店の人気NO1.の米焼酎で1978年産の25年古酒であります。
御存知ない方はいないと思いますが、知らないぞという方はこちらから
予習の意味で見て下さい。
http://www.marukawaya.com/shochu/matsushita/yorozuya.html
 
 
 
 では はじまり はじまり〜♪
 
 
 熊本県は球磨郡の水上村というところにある、小さな焼酎蔵に泊まら
せていただいた朝からスタートしましょう。
 
 
◆松下さん、私、二日酔いなのですが、・・・
 
 朝6時の町内放送で目がさめました。ラジオ体操の時間なのですね。
しかしながら、音量がでかい。山で反響しているみたいです。これでは
寝てはいられません。でも、泊まらせてもらって6時から起きて、うろう
ろするのも気を使わせてしまうかなあと思い、もう一眠りすることにし
ました。朝の早いのは、自分の子供達に鍛えられて平気です。どんなに
飲み過ぎた翌日でも、子供達は容赦しません。
 
 パッと起きて7時25分、もう一息と思ったら9時30分になっていました。
おおっといけない!寝過ぎてしまいました。朝ごはんの時間です。階段
を降りて、昨日の飲んでいた部屋にいこうと思いましたが、朝食の部屋
は昨日とは違っていました。さすが、蔵は広いものです。
 
 松下さんは包丁をことこと、天ぷらをジーンジーン、ハム入り卵焼き
をジュージューと焼いています。男が台所に立つと調理器具が小さく見
えますね。真剣に料理している松下さんと焼酎を造る松下さんと重なっ
て見えるのですが、予想していない風景だけに、不思議でした。
 
 そんなことを一人で考えている間にお料理は運ばれてきました。寝坊
して申し訳ないと思いつつ、今日はどんなお料理かなあと、楽しみなん
ですが、たくさん出てきたらどうしようかと思っていました。
 
 そうなんです。ばりばりの二日酔いです。でもそんな素振りを見せたら
静岡人の恥になると思って言い出せません。
 
 卵焼きに五目ごはん、そして天ぷらが加わったと思ったらおそばが出
てきました。おそばと天ぷらの組み合わせは絶品です。多いなあなんて
思いつつも全部食べてしまいました。二日酔いと言い出さなくって、こ
こまではよかったのであります。
 
 食事も一段落したところで、奥さんがいろんな焼酎を運んできました。
麦焼酎やら昔の陶器に入っているものなどなど。極め付けは米焼酎のハ
ナタレでした。奥さんから何も言わずに出されたものですから、気にせ
ずそのまま口に含んでしまいました。ハナタレは強烈です。アルコール
が86゜あるそうです。そんな事も聞かされずに、素直に口に入れてしま
ったから、さあ大変。とりあえず飲み込んで、ゲェ〜っと叫んでしまい
ました。もう二日酔いなんて関係ありません。その気持ち悪さもぶっと
ぶくらいの強烈なアルコールでした。
 
 ハナタレという商品はいくつもありますが、すべて調整してあるため
に、本物のハナタレではございません。本物のハナタレをはじめて経験
しましたが、すご〜く香りもよく、どこか清酒に似ていました。(酒税
法上で市販酒のアルコールの上限は45゜未満となっています。)
 
 
 
◆いよいよ蔵内に突入  萬屋次兵衛の素顔とは?
 
 今日は蔵とか商品を見せてもらえることになりました。萬屋次兵衛の
素顔がようやく見れます。どんな風にして生まれたのか、いよいよわか
るときがきました。
 
 焼酎の蔵はかめやホーロータンクが並んでいる部屋、蒸留機のある所、
麹造りなどの原料処理をするところに分かれています。7月は仕込みが
ありませんので、蔵の中は誰もいません。かめやタンクには貯蔵されて
寝ている焼酎が入っていました。
 
 まず、地面の中に埋まっているかめを奥さんに開けてもらいました。
ふたの下には、その焼酎が何かを示すはり紙がありました。いきなりで
すが、萬屋次兵衛の何年と書かれていました。奥さんの御説明ですと、
萬屋次兵衛はシェリー樽に入れて長期に寝かすものと、地下のかめに入
れて寝かし、さらに地上のかめに入れて寝かしてから出荷する2タイプが
あるということでした。このかめに入っているのは、2年後に発売される
かめ貯蔵の萬屋次兵衛で、今は地下に寝ている状態だそうです。かめの
数の関係で、年間生産量は1.8Lで600本だそうです。もったいないとは思
いつつも、今の状態がどうなのか、気になりましたので、ちょってだけ
かめから汲んで味見しました。刺激的です。まだまだまろやかさが出て
いません。原料も何かわからないくらいです。じっくりじっくり熟成さ
せて、出荷の時を待っているのでしょう。
 
 地下のかめから地上のかめに移されているのもありましたが、密閉し
てあり、味見のできない状態でしたので、これらはやめときました。
価格を聞きましたが、そんな安くて割に合うの?と思ってしまう価格で
した。
 
 25年古酒の萬屋次兵衛のところに移りました。
 
 445Lと書かれたシェリー樽が2本と後から追加された新しい同様のシェ
リー樽が4本ありました。萬屋次兵衛はこのシェリー樽で寝かされるよう
です。ある程度シェリー樽に入れられ、その後はかめやホーロータンク
へと移され熟成をすすめるそうです。ここにある2本の古いシェリー樽は
記念に買ったそうです。松下御夫婦が御結婚され、御出産された時に
購入されたと言っていました。双児の女の子なので、この子達の結婚の
引き出物にしようと考えていたそうです。引き出物にするには充分すぎる
量ですので、市販されているのですね。
 
 思ってもいない、萬屋次兵衛の出生の秘密を知ることができました。
商売のために造った商品でないなんて聞きますと、よけいにかわいくなり
ますね。これだけの品質ですので、たくさん瓶詰めしてお金にしてしまえ
ば、松下さんの家計も楽になります。実際問題、4人のお子さんがいて、3
人の子が実家を離れての大学生、もう一人は息子さんで地元の高校生です。
仕送りを聞きましたが、大変なものです。普通ならば、どうせ売る商品と
思えば売ってしまいたくなります。しかし、そこはぐっと堪えて、どうに
かやりくりしています。販売店も増やしたくないと言っていました。車も
高校生の息子さんが生まれた時に買ったものをずっと乗り続けています。
 
 松下酒造は創業が江戸時代で球磨焼酎では一番古いと聞いています。仏
壇の位牌の数を見て驚いてしまいますが、いったい蔵として何が一番大事
なのかを代々に渡って語り継がれてきたのでしょう。目先の欲に溺れては、
御先祖様に申し訳ないですし、今の松下さん御夫婦のしていることを娘さ
んや息子さんが見ていますので、見えない将来も予感しながら、今を生き
なければなりません。熟成を必要とする焼酎蔵ならではの伝統でしょうか。
 
 
 
◆やはり秘蔵酒はあったのです、でも・・・
 
 蔵元に行くと、清酒蔵なら冷蔵庫に何か変わったものがないか見たくなり
ます。焼酎蔵でも同じで、どこかに何かがないかなあと、隅々まで見たく
なります。まるでNHKのテレビに出ていた「焼酎ハンター」のようです。
 
 松下酒造では、球磨焼酎ですので、基本は米が原料だそうです。しかし、
お米が不作の時は、焼酎に回すよりも、食用として使われますので、米の
不作の年は、その他の原料でも焼酎を造るらしいのです。いつか忘れました
が、米の凶作が2回ありましたね。その最初の凶作の時にそば焼酎を造り、
2回めの凶作の時には麦焼酎を造ったそうです。この時の麦焼酎とそば焼酎
が、貯蔵庫の片隅にありました。麦焼酎はほどほどにあり、そば焼酎はほと
んどありません。
 
 最初はこういうのこそ、見つけて、当店の御客様に「とっておきの蔵の秘
蔵酒」とでもして売れればと思っていましたが、そういう商売的な浅儚なこ
とはやめました。そば焼酎を造りはじめ、熟成して、飲まれてきたここまで
の歴史が私がこの焼酎を売ることにより、あまり意味のないものへと変えて
しまいます。このそば焼酎はこのそば焼酎ができてから携わってきた人たち
のものであると、そっとしてあげたいと思いました。それがきっと一番いい
のでしょうね。
 
 この少ししかないそば焼酎があることを知った酒屋さんからは、「早く
送ってくれ。」「頼んだけど、まだできないの?」というFAXが頻繁に来る
そうです。商売だから仕方ないですけど、この流れに乗せられる商品と乗れ
ない商品があります。消費者のために喜んでもらいたいから売るんだという
理屈はわかります。でも生産量や存在価値を忘れて販売に走れば、結局は
消費者からお酒を奪うことにつながります。せっかく蔵まで行ったのに、
売れないなんて〜。という気持ちと、焼酎とはこういうものだという納得
した気持ちと共存してしまいました。
 
 
 
◆いよいよ別れのときが来た
 
 楽しかった2日目も、もうお別れの時間が近づきました。人吉のバスター
ミナル16時発のバスで帰路に向かいます。ここまでは松下さんが車で送って
くれるというので、甘えさせてもらいました。帰りに松下さんの御実家の前
を通りました。米農家です。その広さ10町歩もあります。3万坪ですよ。び
っくりしちゃう広さです。アメリカのとうもろこし畑みたいです。ここで
生まれて育った人間と、私のようなマッチ箱のような生け簀で育った人間と、
いろんな人がいるものです。水上村や人吉は視界が広くて清々しています。
こういう土地で育まれた焼酎とよく理解して付き合っていきたいものです。
 
 
 帰りの飛行機では一人になっていろいろ考えました。
 
 もし、私が蔵元の立場だったら、来てくれた酒屋さんとどういう付き合い
方をするのだろう。
 
 私ならばこうしたいです。
 
 今、あなたと私しの付き合いが始まりました。あなたのために焼酎は造り
ます。でも熟成が必要なのです。今から熟成させますので、機が熟してから
販売はお願いしますと。
 
 決してその場の気分で商売はしてはいけないのですね。ずっと続けたいの
ならば、なおさらです。
 
 
 
◆着陸、そして旅はまだ続きます。
 
 飛行機は20分遅れで、名古屋空港に着陸します。名古屋は雨みたいです。
人吉のバスターミナルでバスが出発するまで、ずっと見送ってくれていた
松下さんの顔が、飛行機の窓ににじんで映っています。
 
 ありがとう、松下さん。 そして出会った皆様。
 
 皆様の御恩を忘れずに、球磨焼酎を販売していきます。
 
 
 
 
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後書き
 
 いかがでしたか? 2回に渡った松下酒造の蔵元訪問記。私の気持ちとか、
蔵の雰囲気がそれとなく伝わっていただければと思いますが、どうでした
か。
 
 あれから松下さんからそば焼酎と麦焼酎を送っていただきました。そば焼
酎は、申し上げたように販売をしません。麦焼酎は数量的に問題がなく、且
つ皆様に御迷惑にならなければ、ほんのちょっとだけ、もらおうと思います。
 
 今、手元にそばと麦が1本づつあります。思いでがびっしり詰りすぎて、
私はあけることができません。瓶も見れないと言うのが、正直なところ。
どなたか、このメルマガを読み、いっしょに飲んでいただける方がいました
ら、メールください。試飲でもかまいませんから。
 
 
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
貴重なお時間をすいませんでした。
 
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次回は8月15日に発行いたします。
 
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