きき酒テクニック:瓶詰直後臭1

 何年前になりましょうか。東京のKKRホテルにて長期熟成清酒研究会と長期熟成清酒勉強グループの勉強会がありました。

 熟成古酒とお料理との相性もみましょうと、並々ならぬ熟成古酒を蔵元が持ち寄り、飲食したことがありました。私はいろんな熟成古酒を存分に味見することができました。

 その中で、あれっ! と思ったお酒がありました。北関東のとある蔵元さんの23年古酒です。23年も熟成しているのに、華やかです。極低温貯蔵していたからでしょう。一同、その華やかさに驚いていました。

 中には、23年古酒は偽りではないのか?そんな疑いを持たれる蔵元さんもいました。

 私は華やかですが、はじける勢いのない香りから、これは熟成しているなあと思いました。長期超低温熟成された果実香は落ち着きがあります。若干輪郭がぼやけてもいます。

 それと、同時に、このお酒はこの瓶に詰められて、熟成してきたのか、との疑問を抱きました。黒い720mlのラベルにはきちんとしたレッテルが貼ってあります。これ自体商品であることは間違いありません。

 私が疑問に思ったのは、熟成感のあるお酒の中に、フレッシュな水のような存在があったからです。

 蔵元はその席で23年くらい熟成させてきましたと説明しています。その場で蔵元に質問はできません。

 質問する代わりに、後日御蔵へうかがってよろしいでしょうかとお願いしました。蔵元は了承してくれて、うかがうことができました。そして、疑問に思っていたことを、勇気を出して聞いてみました。

 「あの時の熟成古酒はどこかに寝かせてあるものを、勉強会のために、瓶詰めしたのではありませんか?」

 「そうだよう。あの前日に必要な分だけを瓶詰めしたんだよ。」

 やっぱりそうだったのか。

 瓶を洗って、詰める前に、詰めるお酒でリンスしてくれれば、水っぽさは出なかったのに。

 瓶詰め直後は水の気配があるお酒があります。お酒と水と出会ったばかりで、馴染んでいないからでしょう。この蔵の場合は、水癖が出なかったからよかったです。

 味わい的に感じるのに、「臭」とついています。これは味わいであっても、「臭」とお酒の欠点を指摘する場合に使うことが多いからです。


お酒の講座 / 丸河屋