土瓶蒸しとワインの相性

2006年9月25日

 土瓶蒸しは日本全国どこでも食べられている料理だと思います。関西ではハモ、関東はアナゴなど、ちょっとづつ食材も違っているでしょうが、松茸が主役であることと、味付けは同じであろうと思います。鶏肉もエビも入れたりしますね。

 土瓶蒸しに日本酒を合わせるのは妥当で想像の範囲です。しかし、ワインはどうでしょう?未知の世界ではないでしょうか?合わないのか、合うのか。ワインを無駄にしてしまうのか、喜びが生まれるのか、ドキドキしながら相性研究をしました。

 上のワインにはピノノワール品種が入っていませんでしたので、別途相性研究に加えました。これで9種類のワインとの相性研究となりました。

 使ったワインを写真の左からリストアップします。
●「2005 ルバイヤート 甲州シュールリー」
  山梨県勝沼のルバイヤートの甲州種から造られた辛口。
●「2003 Zeller Schwarze Katz Kabinett」
  ドイツのリースリング種から造られた甘口。
●「1998 MONTAGNY 1er CRU CHATEAU DE CARY POTET」
  フランスのブルゴーニュ地方のシャルドネ種から造られ、樽貯蔵させた辛口。
●「ルバイヤート赤」
  国産ブレンド赤ワイン。
●「2003 Les Haut de FLEURENS」
  南フランスのグルナーシュとシラーという品種から造られた陽気ななめらかなワイン。
●「1989 Reserve de la Comtesse」
  シャトーピッションロングビル・コンテッセ・ラランドのセカンドワイン。
●「Jacob's Creek BRUT CUVEE」
  オーストラリアのジェイコブズという会社はイギリス国内で最も消費されているメーカーのひとつ。シャルドネとピノノワールという品種から造られた辛口スパークリングワイン。
●「Jacob's Creek ROSE」
  同じくジェイコブスのスパークリングワインのロゼ。
●「2003 PINOT NOIR PATRIARCHE」
  南フランスのピノノワールで、この品種独特のピーマンの香りもあり、スパイシー的なところもあります。

 今回用意したワインは9種類。だいたいのタイプは網羅していると思います。ワイン代だけでも2万円以上もかかった贅沢な相性研究となりました。まずは土瓶蒸しの出汁とワインとの相性からみてみます。

 1.「土瓶蒸しの出汁 + ワイン」

甲州
ルバイヤート


×〜△
酸っぱくなってしまった。

国産赤
ルバイヤート



赤ワインらしさがアクセントとなって旨い。

リースリング
カッツカビネット

×〜△
例えようのない異味を生じた。

シャルドネ
モンタニ−



松茸のきのこと土の香りと絶妙に合う。

グルナーシュ
レゾードフルーレンス


ワインの渋味が出てきて進まない。

カベルネソーヴィニオン
レゼルブコンテッセ


○〜◎
すっきりとまとまる点では◎。すっきりしすぎてよくないと思えば○。

スパークリング白
ジェイコブズ


ワインの苦味と出汁の旨味が苦くなったようだ。

スパークリングロゼ
ジェイコブズ



ワインの酸味が強く感じる。炭酸も入っているためだろう。

ピノノワール


×
ワインの酸っぱさが目立しすぎ。

「相性診断」
 個々のワインの説明をしていると長過ぎてしまうので、それは省くとしよう。土瓶蒸しとワインと合わせること自体が稀だし、ここまでの本数でこのように合わせるのは私だけかな。

 甲州は日本古来のぶどうなので、是非とも合ってもらいたいと願っていた。しかしワインの酸に負けてしまったようだ。国産の赤とは素敵な組合せとなってくれた。

 甘口ドイツワインとしてカッツを使ってみた。正直、甘さが不安だったが、背の青い魚との相性で生ずるくらいの異味を生じてしまった。

 シャルドネはフランスのブルゴーニュ産の樽貯蔵されたモンタニ−を使ってみた。繊細な土瓶蒸しに個性が強いワインなので、ワインが勝ってしまって土瓶蒸しの味わいが消されてしまうとの予想だったが、どうしてでしょうねえ。樽に入れたワインの風味と松茸の香りが見事に調和した。

 フランスの赤ワインとしてはカベルネ主体のボルドーのシャトーものと、南仏のグルナーシュとシラーから造られた渋味が軽くやめらかなタイプと南仏のピノノワールから造られた力強いワインを用意。南仏のワインとではワインの渋味が出てきてお酒もすすまない。ピノノワールはワインの酸味が際立ってしまった。また、ボルドーのシャトーものとはすっきりまとまる好相性だった。

 スパークリングワインはどちらもオーストラリア産を使ってみた。イギリスで一番飲まれているメーカーでもある。スパークリングワインは炭酸と果実からの酸で他のワインよりもシャープな感覚がある。レモンやグレープフルーツの印象に近い。白は出汁の旨味が苦味となった。ロゼはワインの持つ酸が強く感じるようになった。

 結果としてわかったことは、土瓶蒸しの出汁にはブルゴーニュのシャルドネから造られる白ワインとボルドーの熟成した赤ワインが良さそうだということ。

 

 次に一般的な土瓶蒸しにすだちを加えるという相性をみてみた。

 2.「土瓶蒸し出汁 + すだち + ワイン」

甲州
ルバイヤート



すだちとワインの酸同士がからみあって旨い。舌の上で踊るようだ。

国産赤
ルバイヤート



さわやかで後味にトリュフ風味。

 

リースリング
カッツカビネット



ワインの甘味とすだちの酸。このバランスが平行棒を上手に演技する感覚でいい。

シャルドネ
モンタニ−



旨味と酸味のさわやかさで最高!

グルナーシュ
レゾードフルーレンス

×
すだちと合わない。香りがゴムっぽくなる。

カベルネソーヴィニオン
レゼルブコンテッセ


ワインの一人勝ちで出汁の存在感がなくなった。

スパークリング白
ジェイコブズ


トリュフのような風味が生まれた。

スパークリングロゼ
ジェイコブズ


ワインがすべてをきれいに流す。ハーモニーがあれば◎だが。

ピノノワール



ワインの酸っぱさが目立ってしまう。

「相性診断」
 フランス産の赤ワイン以外はみんな相性はよくなった。どうしてなんだろう。柑橘類はワインの相性をよくしてくれると思うが、柑橘系でも東洋と西洋では違う。日本では東洋物として、かぼす・すだち・ゆずなどがあり、西洋物としてレモンやライムがある。すだちではなく、レモンを土瓶蒸しに加えたら、この点も解消されたかもしれない。

 それにしてもすだちを加えたことにより、国産ワインとの相性が抜群によくなったことは特筆すべきだ。

 

 続いては主役の松茸とワインとの相性はどうなのか探ってみた。

 3.「土瓶蒸しの松茸 + ワイン」

甲州
ルバイヤート


△〜○
合うのだが、ワインがちょっと松茸の茸独特の個性を出す。

国産赤
ルバイヤート



松茸が美味しくなる。赤ワインを飲んでいる気がしないのが不思議で、なおかつ旨い。

リースリング
カッツカビネット


△〜○
ワインの甘さで覆われてしまう。その後塩っけに包まれ、この塩っけが無くならず、もう一杯と進めない。

シャルドネ
モンタニ−


◎◎
松茸のきのこと土の香りと絶妙に合う。

グルナーシュ
レゾードフルーレンス


悪くはないが、押し入れや土壁のような香りがしてくる。香り同士が合わないようだ。

カベルネソーヴィニオン
レゼルブコンテッセ

◎◎
ワインの落ち葉的な要素と松茸の香りとバッチリ合う。

スパークリング白
ジェイコブズ


なめらかに旨い。後味にトリュフの香味を残す。

スパークリングロゼ
ジェイコブズ



まるで柑橘類が加わったかのようにさわやか。

ピノノワール


×
ワインの味しか感じない。特に酸っぱさ。

「相性診断」
 甲州はワインが松茸の香りを引き立てずに、松茸などの茸類の持つ土のような旨苦味を引き出した。甲州と同じ製造者のルバイヤートの赤も国産代表の赤として当ててみたが、こちらは松茸のボディーがひとまわり大きくなったように味が濃く感じて美味しい組合せであった。

 カッツは甘さがどうかと思ったが、意外にも塩っけを口中に残す結果となった。

 ブルゴーニュのシャルドネは樽貯蔵して生まれたナッツの風味が見事に松茸と合った。素晴らしい相性だ。

 南仏の赤は悪くはないが、押し入れや土壁のような家の隠れて見えない部分のような臭いがした。一方、充分な熟成を得て落ち葉の香りがするボルドーのシャトーものとはバッチリ合った。意外も意外で、普通はこのように書いても疑いを持たれそうで恐い。

 スパークリングワインの白はなめらかになった。まるで荒波が静かな凪になったような感じだ。そしてびっくりしたのが後味にトリュフ風味を残したこと。土瓶蒸しは野菜と魚類の組み合わせであるが、スパークリングワインはこれらを動物化してしまったのか?トリュフも松茸と同じきのこではあるが、香味はどちらかと言えば動物的である。ロゼは柑橘系のさわやかさを与えるいい相性となった。

 結果として松茸にはきのこと同じような風味のナッツ香のあるブルゴーニュのシャルドネ、きのこと同じような土っぽさのあるボルドーの熟成したもの、またさわやかさを演出するスパークリングワインがよい。

 

 最後は松茸にすだちを加えてワインとの相性をみた。

 4.「土瓶蒸しの松茸 + すだち + ワイン」

甲州
ルバイヤート


◎◎
まったく美味しいという意外にない。ワンダフル。

国産赤
ルバイヤート



土壁の臭いが出そうであったがバランスが整った。

 

ドイツの甘口
カッツカビネット

×
例えようのない異味を生じた。

シャルドネ
モンタニ−


◎◎
後味もきれいでさわやか。塩味と旨味が余韻に残り、すすむ、すすむ。

グルナーシュ
レゾードフルーレンス

△〜○
舌の上に茸系の旨味は残る。でも旨いまではいかない。

カベルネソーヴィニオン
レゼルブコンテッセ

◎◎
トリュフではない、やはり松茸だ。みんなに教えたい、いやいや教えたくない組合せである。

スパークリング白
ジェイコブズ


松茸のシャキシャキ感とワインのさわやかさがから生まれるものはないが、口の中で美味しい。

スパークリングロゼ
ジェイコブズ



西洋風のコクが加わったようだ。土瓶蒸しの旨味の幅からはみだすが、旨い組合せには入る。

ピノノワール



すだちでワインの酸っぱさが和らぎ、松茸の味がするようになった。

「相性診断」
 甲州にはじめて◎◎がついた。面目が保たれたというわけだ。シャルドネのモンタニ−とボルドーのシャトーものはここでも抜群の相性を引き出した。

 

 上の4つの組み合わせをひとつの表で表わすとこうなります。

-

出汁

出汁+すだち

松茸

松茸+すだち

甲州

×〜△

△〜○

◎◎

国産赤

ドイツ甘口

×〜△

△〜○

×

シャルドネ(樽)

◎◎

◎◎

南仏の赤

×

△〜○

ボルドーシャトー

○〜◎

◎◎

◎◎

ピノノワール

×

×

スパークリング白

スパークリングロゼ

「相性診断」
 出汁だけよりも出汁にすだちをかけた方が相性がよくなっている。松茸の場合も同様だ。ブルゴーニュの樽貯蔵さけたシャルドネのワインはすべての条件で◎以上となった。総合的に◎◎を見てみると、甲州とシャルドネとカベルネの品種とよくなったとわかる。

 

 !今日の格言!

 土瓶蒸しをワインで合わせるなら、熟成感のあるシャルドネかシャトーものの赤で合わせよ。すだちがあったら甲州の辛口も最高。

 

 まあここまでしますと、お酒と料理との相性はいろんな要素を考えあわせなければならず、お酒は飲むが酔っていられない研究である。