土瓶蒸しと日本酒の相性

2006年9月24日

 秋の味覚第5弾。

 世界きき酒師コンクールの問題にも出てきました、土瓶蒸しの登場となりました。土瓶蒸しは静岡市葵区田町にある寿し幸さんの新さん製作によるものです。新(あたらし)さんは未来の巨匠として調理場の主任を任されています。お寿しやさんのにぎらないメニューをにぎる責任者であります。

 今日は午後8時に取りに来るからねって頼んでおきました。わざわざ1個だけを今回のお酒との相性研究のために作ってくれました。

 土瓶蒸しの中には、まつたけ、アナゴ、ギンナン、エビが入っています。美味しい出汁が出るはずですね。

 土瓶蒸しは季節の香りを飲む(食べる)料理です。まずは出汁と日本酒との相性をみていきましょう。

「土瓶蒸しの出汁 + 日本酒」

大吟醸
君盃

△〜○
お酒の香りと出汁の香りが消し合うが旨味としては合う。

本醸造
君盃-生



さわやかにバランスが取れる。

純米
登龍門


お酒の酸が強調されて旨くなった。

山廃純米
海舟の山廃


コク同士が抜群に合う。

ひやおろし(純吟)
君盃-もみじ



お酒が強いが後味は変化。出汁とお酒が合わさった何とも言えない心地よさ。これが秋の味だ。

ひやおろし(本醸造)
安倍川の恵み


△〜○
旨いがお酒のアルコールが強い。加水して○。

熟成酒
南部美人純米1999



香味のバランスはよし。後はこの感覚が好きかどうかだ。

木桶仕込
南部美人


枯れた味。枯れ葉や木枯らしを想像する。冬が来そうな雰囲気。

発泡にごり
鶴齢(純吟)



お酒が強い。後味に出汁が蘇り余韻がよい。

「相性診断結果」
 土瓶蒸しを飲み物感覚で日本酒と合わせました。まず土瓶蒸しを口に含み口中に満遍なく行き渡らし味を確かめる。飲み込み、なくなる直前に日本酒を口に含んで相性をみました。出汁と日本酒の相性は香りと味の双方からみればいいとわかりました。
 大吟醸は香りは合いませんが、味は合いました。
 本醸造は香りも味も合いますが、すごく合うところまではいきませんでした。
 純米酒は2つとも合いました。香り同士は表には出ず、味が合っていることが表面に出ました。
 ひやおろしはアルコール度数が問題でした。
 熟成酒とですが、熟成酒が好きであれば○でいいのですが、そうでなければ△以下になりそうです。
 木桶仕込と合わせますと、枯れて乾燥している葉っぱのような感じの香味になります。これからの季節感となり、合うと言えましょう。
 発泡しているにごり酒とですと、お酒が強くなります。しかし余韻に出汁が蘇る現象がおきました。これからわかることは、出汁は繊細で自己主張してきませんが、後味にお酒が消えた後からも残っていて、出汁が蘇る感覚をおぼえるくらいに余韻が素敵でした。出汁は最終的にはお酒に負けにくいといえます。
 結果としては、おとなしめのひやおろしとの相性が一番よかったです。

 

 出汁にすだちを入れて日本酒との相性をみます。これが一般的な土瓶蒸しの楽しみ方でしょう。

「土瓶蒸しの出汁 + すだち + 日本酒」

大吟醸
君盃

◎◎
出汁、すだち、お酒の三味一体。

本醸造
君盃-生


○〜◎
大吟醸には負けるがお米のコクも感じて旨い。

純米
登龍門


お酒の長所がでてきて旨い。

山廃純米
海舟の山廃

△〜○
お酒の熟成味がやや目立つ。

ひやおろし(純吟)
君盃-もみじ


◎◎
やはり抜群で言い様がない。

ひやおろし(本醸造)
安倍川の恵み


◎◎
これも三味一体。ジーンと来る。

熟成酒
南部美人純米1999


△〜○
お酒の熟成感が気になれば△。味的には○。

木桶仕込
南部美人


お酒の酸が目立つ。後味は出汁が追い掛けてきてまとまる。

発泡にごり
鶴齢(純吟)


○〜◎
お酒の影にひっそりとすだちと出汁がたたずむ。旨いが感動までは達せず。

「相性診断結果」
 すだちを加えますと相性はよくなりました。やはり柑橘類はフルーティーな香りを持つお酒との相性をよくしてくれます。松茸、あなご、ギンナン、エビといった各種の味わいが加わり、いい方に見方した結果となっています。
 一般的な日本酒とはだいたい合います。その中でも大吟醸とひやおろしとは別格的な好相性を示しました。これが決定打となることでしょう。
 ここまで美味しい組合せを知ると、生きていることに感謝すべきだなあと、しみじみ思います。

 つづいては土瓶蒸しの松茸と日本酒との相性をみてみます。何たって松茸が主役ですからねえ。
「松茸 + 日本酒」

大吟醸
君盃


お酒が苦くなった。バランスが悪い。

本醸造
君盃-生



普通にまとまっていい。ただ、絡み合わないのでどっちつかず。

純米
登龍門


えぐみがお酒に強調される。

山廃純米
海舟の山廃


お酒の量を少なめにするとまとまる。香り同士も同系で合う。

ひやおろし(純吟)
君盃-もみじ



松茸、出汁、お酒が同調して美味。

ひやおろし(本醸造)
安倍川の恵み



アルコールが高いのでお酒が強くなってしまった。

熟成酒
南部美人純米1999



共鳴!お酒がチョコレートになった第3の味が生まれた。

木桶仕込
南部美人

△〜○
ややお酒が強いが、合う部類には入る。苦味同士が合う。

発泡にごり
鶴齢(純吟)



平行な相性だが旨い。リスタートの効果もある。

「相性診断結果」
 土瓶蒸しの中には松茸とあなご、エビ、銀杏などが入っていて、複雑な香味を演出しています。松茸だけを取り出して日本酒との相性をみました。これらのいくつかの成分が松茸に隠れて演じていました。松茸の香りと茸類独特の味わいと日本酒がどう絡まったかが上の表です。
 大吟醸は主に後味に苦味が感じられます。この場合は茸類独特の旨苦味とバッティングしてしまい、苦味が増幅されました。大吟醸のフルーティーな香りと松茸の木の子としての香りも合わず、バランスの悪い相性となってしまいました。
 本醸造は極普通に合うと考えられました。この本醸造は生でよくある老ね香はないタイプです。純米酒は2つ試しましたが、松茸に対して少しの量ならばいけそうです。
 当初の予想ではダントツで合うと思われたひやおろし。2つのタイプでみてみました。どちらも原酒、本醸造は19゜あり、純吟は16゜台。本醸造は高アルコールなので、香りがより高く(きつく)感じられるので、香りを基準にして合わせる必要がありそうです。今回は香りは合うのですが、アルコールの高さが際立ち、お酒だけの存在となったようです。
 一方の純吟のひやおろしは香味のバランスが整っていて、出しゃばるよりも脇役にも徹しそうです。お酒が生の状態で熟成し、枯れた感じの香味に松茸と出汁が見事に調和しました。
 熟成酒との相性は、もうびっくりです。どうしてこのような味が生まれたのでしょうねえ。チョコレートのようなトリュフにも似た味が生まれました。
 木桶仕込みのお酒は元々は甘口なのが、木桶で造ることにより、いろんな香味が加わり、結果としては、苦味をともなった酸味が強烈で、和物よりは洋物の料理に合いそうです。松茸とは苦味には通じますが、お酒が強くなってしまいました。
 にごり酒は発泡している炭酸により、後味もスッキリでリスタートをきれる相性です。
 結果としてはおとなしめのひやおろしがベストとなりました。松茸の香りを引き立ててこそ、出汁とお酒と混在して美味となります。

 

 次はすだちをかけて松茸と日本酒の相性をみてみます。

「松茸 + すだち + 日本酒」

大吟醸
君盃


すだちの酸、松茸の旨味、お酒の甘酸が一体化して美味。

本醸造
君盃-生



普通にまとまっていたのが、さわやかにまとまった。

純米
登龍門


赤い果実のような第3の味を産んだ。

山廃純米
海舟の山廃


終始お酒の個性が強いがあっている。

ひやおろし(純吟)
君盃-もみじ



すだちが他をまとめている。全ての要素にすだちの風味が乗り、気持良い。

ひやおろし(本醸造)
安倍川の恵み



お酒が旨くなる組合せとなった。胸が熱くなるほど美味しい。

熟成酒
南部美人純米1999



すだちによって、酒は酒、松茸は松茸と分ける。旨いので相性的にはいいと思う。

木桶仕込
南部美人


お酒の酸が丁度いい具合になり、終始さわやか。

発泡にごり
鶴齢(純吟)



お酒のコクにすだちの風味は薄れるものの、旨い相性だ。

「相性診断結果」
 すだちをかけたらすべての組み合わせで○以上となった。な〜るほどですな。松茸と日本酒の相性としての欠点をすだちが埋めてくれた格好です。大吟醸、ひやおろしの本醸造ともバッチリ。ただ、熟成酒との間に生まれた第3の味はなくなりました。ああいうのは、特異性なので、ちょっとピントがずれるとなくなるのでしょう。あのような特異性を発見することも相性研究の役目であります。

 

 上の4つの組み合わせをひとつの表にしてみます。

-

出汁

出汁+すだち

まつたけ

まつたけ+すだち

大吟醸
君盃

△〜○

◎◎

本醸造
君盃-生

○〜◎

純米
登龍門

山廃純米
海舟の山廃

△〜○

ひやおろし(純吟)
君盃-もみじ

◎◎

ひやおろし(本醸造)
安倍川の恵み

△〜○

◎◎

熟成酒
南部美人純米1999

△〜○

木桶仕込み
南部美人

△〜○

発泡にごり
鶴齢

○〜◎

 君盃の純米吟醸のひやおろしはすべての組み合わせで◎以上であり、このお酒が最高となったもよう。◎◎と相性を探すと、大吟醸と2つのひやおろしの3つなる。

 

 !今日の格言!
 土瓶蒸しはすだちをかけるべし。そして大吟醸かひやおろしをあてよう。

 

 

お酒とお料理の相性