土瓶蒸しとひやおろしの相性

2006年10月16日

 旬のもの同士を合わせれば相性も合いそうですし、この時だけしか味わえないという価値も上乗せされて、うれしさも膨らみます。

 秋の味覚の土瓶蒸しとひやおろしの相性をみてみました。土瓶蒸しと日本酒の相性のところにもひやおろしは2本登場して合わせてみましたが、今回は7種類のひやおろしを用意して相性をみてみました。このくらいやれば、ひやおろしのタイプも網羅されてくることでしょう。

 ひやおろしは各メーカーで発売されいますが、お米を磨く精米歩合などのように法的な規格がありません。メーカーがこれがひやおろしですよと夜に出せば、すべて通ってしまうものであります。

 専門店の酒屋としてはこの時期に発売するからひやおろしではなく、ひやおろしとして出すために製造されたひやおろしをお薦めしたいものです。

 今回は7つのひやおろしをきき酒してタイプを知ったあとから土瓶蒸しとの相性研究に臨みました。

 

 ではまず、7つのひやおろしから説明していきましょう。

 写真の左から@からFとしました。

@「猫魔の雫-純米原酒生詰」 福島県末広酒造
 原料:会津産五百万石、精米歩合:60%、アルコール度:17゜〜18゜、日本酒度:+3、酸度:1.3
 生詰と表示されているが、生っぽさはなく、締まりのあるスッキリ系だ。火入れのお酒のような熟成感がある。純米酒らしいお米由来のコクとミルクキャンデーのような甘味のあるやや甘口。

A「手取川-山廃純米生詰無濾過」石川県手取川酒造
 原料:五百万石、精米歩合:60%、アルコール度:16゜〜17゜、日本酒度:+3〜+4
 生である程度貯蔵してあったことが、練れた果実を感じさせてくれている。線は細いがコクはある。

B「酒一筋-純米秋上がり」岡山県
 精米歩合:65%、アルコール度:17゜〜18゜
 熟成感は多くは感じない。優しい口当たりでまったりしている。生の状態で低温で熟成したことがわかる。後味もやさしいし、17゜あるアルコールも高いとは感じさせない。

C「高砂-山廃純米生原酒無濾過ひやおろし」静岡県富士高砂酒造
  原料:山田錦、精米歩合:55%、アルコール度:16゜〜17゜、日本酒度:-3
 日本酒度が-3であるために、他と比べてさぞかし甘いだろうと思いましたが、甘辛の点では目立たないくらいのやや甘口。甘さよりもコクが多いため、この数値になっているかのようです。熟したフルーツ、枯れた藁のような生の熟成感があります。余韻がジーンとしっかりあるために、口当たりの甘さから最後は辛さに通じていきます。

D「安倍川の恵み-本醸造ひやおろし」静岡県萩錦酒造
 原料:美山錦、精米歩合:55%、アルコール度:17゜〜18゜、日本酒度:+3、酸度:1.3
 紫色のブドウのような香りがします。デラウェアとか巨峰です。7つの中では唯一の本醸造だけにやめらかさが目立ちます。

E「もみじ-純米吟醸生原酒ひやおろし」静岡県君盃酒造
 原料:美山錦、精米歩合:50%、アルコール度:17゜〜18゜、日本酒度:+1
 ひやおろしは1度火入れしたお酒が多い中、このもみじは一度も火入れしていない、いわゆる生生のままです。純米吟醸だけあって、きれいで透明感がある味わい。生で熟成したので、もちの香りもしています。丁度この時期に美味しくなるように貯蔵された作品と言えましょう。もちの上に乗る米粉のような優しい甘味が特徴です。

F「杉錦-山廃純米ひやおろし」静岡県杉錦酒造
 原料:静岡県産五百万石、精米歩合:60%、アルコール度:18.1゜、日本酒度:-1.5、酸度:2、アミノ酸度:2.7
 これまた風変わりな1本です。ハチミツや醤油を薄〜くした香りがあります。このお酒らしいところは酸味です。口の中に甘味と酸味の旨味が充満するので、唾液が出てきます。酸味が食欲をそそります。余韻は苦味を伴いくどさを感じさせずに、もう一杯と続きます。搾ったお酒の中から、酸度が高いお酒を選んで熟成した後、ひやおろしとして発売されます。 

 色から見ますと、@とEは無色に近いですね。ABCDFはこの写真からでも色があることはおわかりいただけましょう。麦わら色から薄い黄金色をしているのですが、Fが一番濃く、続いてC、ABDは同じくらいに色があるようです。

 色の濃さの理由としては精米歩合と加水と活性炭濾過に起因するところが多いです。お酒はしぼった直後にも色はあります。貯蔵していく間にも、色は濃くなっていきます。精米歩合が高ければ高いほどお酒は透明感があります。アルコール添加して加水すれば、お酒の量は増え、色はその分薄くなります。活性炭濾過をしてしまえば、色は無色に近くなります。

 

  まず、土瓶蒸しの出汁と7つのひやおろしを合わせてみました。土瓶蒸しは温かい40゜くらいでいただき、お酒は常温の20゜で合わせました。

山廃純米原酒生詰
猫魔の雫

△〜○
お酒の熟成感が気になる。お酒の甘味は出汁に合っていい。

山廃純米生詰
手取川


松茸の旨苦味とお酒の蒸れた果実味の感じがとっても合う。

純米
酒一筋

△〜○
基本的には合う味同士。ただアルコールが高く、後味はきつくなる。お酒だけでは感じなかったが。

山廃純米原酒
高砂

△〜○
相性はとってもいいが、アルコールの高さだけが強く感じる。

本醸造原酒
安倍川の恵み

△〜○
相性的にはすこぶる良い。お酒に水を入れてみれば◎。このままではどうしてもアルコールがきつく感じる。

純米吟醸原酒
もみじ


バランスがとれている。後味に米の風味が残る。

山廃純米
杉錦


お酒の酸がすべてをうまくまとめている。具のそれぞれの旨味もわかるくらいだ。後味のスッキリ感がもう一杯を促す。

 次にすだちを入れた出汁との相性をみてみました。

山廃純米原酒生詰
猫魔の雫


お酒の熟成感が気にならなくなりの、お酒が美味しくなった。

山廃純米生詰
手取川

○〜◎
すだちが少量で◎。少し多いと思ったよりもすだちが強調されるので、すだちの量は気をつけたい。

純米
酒一筋


すだちが入ったことによりお酒の美味しさが広がった。特に後味。だからどんどんいける相性になった。

山廃純米原酒
高砂

◎◎
すだちが全体をすっきりさせてくれてまとまる。バランスがすっごくい。

本醸造原酒
安倍川の恵み

◎◎
お酒のぶどうっぽさの果実味とスダチが共鳴した。アルコールの強さも感じさせないくらい。

純米吟醸原酒
もみじ

◎◎
すべてにおいて申し分ない。

山廃純米
杉錦


お酒が強くなる。もともとお酒の酸が強いので、すだちはいらないか。

「相性診断」
 お酒の香りをかいで、これはひやおろしとわかるお酒でなければ、ひやおろしとお料理の相性診断ははじまらない。生の状態で熟成しているとわかるものが、ひやおろし独特の風味。それより若くても、それよりも熟成がすすんでいても、ひやおろしとは扱いたくはない。

 練れたとか蒸れた果実味があるひやおろしはその特徴自体が料理との相性では果実風味となる。したがって、すだちを入れなくても入れたと同じ状態をつくり出すこととなる。手取川、もみじ、杉錦がその例であって相性は良い。高砂と安倍川の恵みも香味はそれらと同じであるが、原酒ゆえのアルコールの高さがある。土瓶蒸しにはアルコールの高さが邪魔になるようだ。水で薄めれば、相性はよくなるのであろうが、ここではそうすることはしなかった。お酒に対してはアレンジをしないこととしたからだ。

 土瓶蒸しにすだちを入れた場合、お酒の熟成感を抑え込むために相性はよくなった。ただし、もともと酸が高いお酒は、すだちがより酸味をあげてしまうために、相性が崩れる酒もあった。

 ここから言えるのは、秋の味覚同士、土瓶蒸しとひやおろしは相性がいい。すだちを加えることによって、もっと相性がよくなることが多い。

 

 ひやおろしの中には、しぼった段階で熟成に向くと思われる酸が高いものを寝かせて発売するものもある。酸度が高いひやおろしは果実を入れない方がよい。

 

 

!今日の格言!

 ありすぎるひやおろしの中で、生っぽいほどよい熟成したもの。枯れ始めや練れた感じのするひやおろしを選ばなければ、ひやおろしの意味がない。練れたひやおろしと秋の味覚は探し求めて味わうべし。

 


 お酒とお料理の相性 / 丸河屋