ボタン海老と生酒

2007年10月26日

 北海道産と書かれたボタン海老が静岡市葵区田町7丁目の静鉄ストアーで売られていた。10匹入って480円。賞味期限は明後日までとある。これなら今夜食べれなくとも明日でもいいなと、言い訳も作って買ってしまう。

 ボタン海老の横には伊勢海老が1匹とあと2つのお刺身が入って1,500円。これもいいのだけれど、自分のお小遣いだとね。やはりぼたんエビに手が届く。

 ボタン海老の体には写真のような白い斑点が見られる。これがボタン海老と名付けられた理由であろうか?

 同じように白い斑点がある海老がヨーロッパの北側の海で捕れるが、これは赤海老と言われる。北海道のボタン海老をよりはっきりした赤色をしているからだろう。

 海老や蟹はミソと呼ばれている部分がある。本当は肝臓である。黄色だったり、緑色だったりする部分。好き好きは別れるが、ここは味が凝縮されていて、私にはすこぶる旨い。

 海老の場合は、頭部の奥にあるので、殻を指ですぼめてから、チューチューと吸わなければならない。

 ミソや肉、水分なども吸い取るので、塩味も加わり、海老らしい香りも、一気に口から入ってくる。これらにやや苦味が加わり、大人の味わいとなるのである。

 このように、海そのものの生臭い物に対しては、日本酒だけは相性がよい。ワインでは、後味が耐えられない。日本酒と合うから、日本人はここをすすってまで、食べるのである。

「仮説」

 海老に限らず、生魚類は生酒と合うのではないか。新鮮さ同士が共鳴するのではないか?
 魚介類は生の時は水っぽく、煮たり焼いたりすると、食感もボリューム感が増す。生では軽い味になる。お酒も同様にフレッシュな生酒の方が熟成感のあるものよりも軽く感じる。

 そのような理由から、
 仮説1. 火入れ殺菌してある普通のお酒ではなく、生酒や生貯蔵といった生系が向くのではないか?

 海老とか蟹は魚と比べると味は濃いのだと思う。魚は骨があるが海老と蟹にはない。骨の無い分、肉に味が乗る。魚を切ると血が出るが、海老や蟹は出ない。硬い殻で覆われていることもあり、捕れてから食するまでに、身から水分がなくなりにくいために、味も濃いのではないか。

 そのような理由から、
 仮説2. すっきりした本醸造系よりもコクのある純米系が向くのではないか?

 

「相性診断」

 上の仮説に基づき、本醸造と純米の生酒を1本づつ選びました。本醸造は新潟産の「越の初梅 生貯蔵」、純米酒は静岡の「君盃 冷撰夏酒生」であります。
 「越の初梅」は雪解け水を思わせる淡い口当たりがして、赤い牡丹の花が口の中に香ってきます。可憐に切れる後味がすっきり感を演出。やわらかいやや辛口であり、決して訴えかけないエレガントさが、ほとんどの飲み手に好印象を与える、そんな1本であります。
 「君盃 冷撰夏酒」は若干のキウイやライチのようなフルーティーさがあって、その上に三つ葉やセロリなどの瑞々しい野菜の香りが漂っています。雑味のないクリアーで透明感のある口当たり。口の中に入ってからは、ぐ〜んと膨らみ、優しいとろけるような甘味も広がってきます。充分冷えた状態で口の含み、口の中で馴染んでくる快感を味わえる1本であります。

 さて、このような本醸造と純米の生酒同士をボタン海老と合わせました。

 してやったり!

 生海老独特のねっとり感と生酒独特のまったり感が共鳴します。生の海老の旨甘味とお酒の甘味が対等に混じります。まるで似た者同士。お互い相手を尊重するがごとく、口中で仲良く結ばれました。

 ここでわかったことは、生の海老には生酒があうことです。

 次は本醸造の生がいいのか、純米の生なのか?

 今回使った2つのお酒の香りは生海老との相性には関係しないというか、影響はなく、存在自体としても相性は良しと言えましょう。これは口に入ってから、膨らんでくる香りにも言えることです。味わいに移りましょう。

 本醸造にはアルコール添加に由来している切れがあり、すっきり感につながっています。今回のような生のボタン海老と合わせますと、すっきりした辛い部分が浮いているような気がします。生海老の甘くて旨い味わいの後にすっきり感がきて、口の中がさっぱして、次にもう一口に進むというのがいいのですが、どうも生海老の甘旨味とお酒の辛さが共存してしまい、それぞれが主張するあまりに、相性は良くない方向に引っ張られてしまいます。
 その点、コクが旨味や甘味に通じている純米の方が、生海老の美味しさを邪魔しないばかりでなく、引き立てるように共鳴してきます。

 つまり、生は生でも本醸造よりは純米が合うと思われます。

 

!今日の格言!

 生のエビには生酒、それも純米の生だ。

 

 余談だが、ぼたんエビと似ているもので、ブドウエビがある。これも北海道特産ですが、幻、超プレミアがついている。鮭と鮭児との関係のようかなあ。値段にして15倍以上も差がある。味以外の価値で値がついている。それを考えると、1匹50円もしないぼたんエビがいい。

 ああ明日も食べたいぼたんエビ。

 ちなみに生ぼたん海老を焼いてみました。透明な身が白くなりました。赤色もいっそう赤になりました。味わいは歯ごたえがある肉質に変わって、旨味が増大しています。同じ海老なのに違った食物となったようです。
 こうなりますと、合わせるお酒もまた違ってくるわけです。


 それから、御客様であります東京の浅草橋にある、キッチン石橋様から御意見をいただきました。
「ボタンエビの足の部分を片栗粉まぶしてあげるとうまいですよ(珍味だけどね」


お酒とお料理の相性